「なぁ、和志oあの噂ってマジ?」
「噂?」
朝、教室に入ると真人がすごい勢いで俺の傍に寄って来たo
「優菜さんが社会人と付き合ってる、って噂」
「え?」
「昨日の8時半くらいに一緒に歩いてるとこ見たってヤツがいるらしいoそれってマジ?」
昨日の夜・・優菜姉はバイトだったから帰って着たのは9時o
可能性としてはありうるo
「何も聞いてねぇや、俺o嘘か本当かも分からねぇ」
「否定しろよーo社会人じゃ勝ち目ねぇじゃん、俺」
「否定できるなら俺だってしてぇよ・・・・」
「あはは、そうだよなo和志ってシスコンだもんなぁ」
マジでショックだったo何も考えたくなくなるくらい、ショックだったo
「ごめんね、和志oびっくりさせちゃってo
彼はバイト仲間で昨日は家まで送ってくれたのoただ、それだけ」
「よ、かった・・・・oマジで・・・良かったぁ」
「ごめん、ごめんoビックリさせちゃったね」
よしよし、と頭を撫でてくれるo
俺は優菜姉のなでなでが好きoすっごい落ち着くんだもんo
「優菜姉・・・・」
「ん?なあに?」
「俺、どうこうするつもりないよo優菜姉に嫌われたくないしo
でもね、でもね、優菜姉o言うことさえできないなんて辛いんだよ」
俺はドキドキと早くなる心臓を静めようと深く息を吸ったo
完全に無駄だったけどo
「優菜姉・・・好きだよ」
優菜姉の目が見開かれるo
そうだよね、すっごい驚くよねoいきなり、だもんo
「弟としてじゃないよo男として・・・優菜姉が好きなんだ」
言えた、とホッとした俺は驚いたo
優菜姉の目からボロボロと涙が零れ落ちたからo
「ごめ・・・っ、優菜姉o俺・・・o
優菜姉、今の言葉忘れてo俺・・・ごめん、優菜姉」
俺がオロオロとしているうちにもどんどん涙があふれてゆくo
どうしよう、俺・・・とんでもないことしちゃった?
っていうか、俺・・・優菜姉にすっごい嫌われてた?
「優菜姉・・・・」
「ごめ・・、和志」
ふんわり、と優菜姉の腕に包まれるo
あったかくて、すっごく落ち着いたo
優菜姉の心音がトクトクって聞こえるo
あぁ・・・・もう良いよ、これでo俺は充分だo
姉弟で良いよo優菜姉が誰かと結婚しても良いよo
俺、それで良いよoだからお願いo
「俺のこと、嫌いにならないで」
姉弟なのに姉が好きなんて・・近親相姦なんて・・ってo
嫌いにならないで、俺のことo
優菜姉に嫌われたら俺、どうしたら良いんだろうo
「嫌いになんてならないよ」
涙声で・・・それでもすっごい優しい声が振ってきたo
それだけで俺の不安は消えたo
ぁあ、これだけで充分だ、俺はo
だって目的は俺の気持ちを知ってもらう、ただそれだけだo
優菜姉が好きだって言葉くれるの期待してないもんo
「和志・・好きよo大好きよ」
優菜姉の心臓はトクトクって早くもなく遅くもなく規則正しい音o
へへ、それで良いんだo優菜姉が俺のこと好きなんてありえないもんo
「ありがと、優菜姉o普通に接してくれて良いからね?」
「違うよ、和志o弟としてじゃなく、男として和志が好きよ」
「えっ?優菜姉・・・?」
俺が驚いて優菜姉を見上げるo
優菜姉の手が離れて優菜姉の顔が見えるようになったo
温かかったからちょっと寂しいかもo
って、こんな感想はどうでも良いかo
「私たち、姉弟なのよ?分かってるの、和志」
「分かってるよoだから優菜姉には気持ち伝えるだけで・・・・」
「私もずっとそう思ってたo和志・・・好きよ」
そういう優菜姉の顔がすっごくやさしくてoすっごく可愛くてo
そっと頬にキスをしたo
だっていきなり唇なんて・・・o優菜姉に怒られそうなんだもんo
頬から口を離すと優菜姉は照れた表情を浮かべてたo
ぜんぜん・・・怒ってないんだ・・・o
「優菜・・・・好きだよ」
俺たちの初めてのキスはお昼ご飯直前の屋上o
いけないと分かっていても優菜姉が俺を好きだという事実がとても、とても嬉しかったo
誰にも祝福されなくたって良い、子どもだっていらないo
優菜姉が俺を好きだと言ってくれるのならo
優菜姉がそばにいてくれるのならo
俺は何もいらないよo
優菜姉がそばにいてくれることが俺の最高の幸せだからo
大好きだよ、優菜姉o誰よりも、何よりもo